<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2012年03月12日

世界最大のデジタルサイネージコンベンション〜Digital Signage EXPO 2012レポート〜

 3月6日から9日にラスベガスで開催されたDigital Signage EXPO 2012に参加してきた。今年で4年連続の参加で、日本人最多出場に違いない。

20120312-1

20120312-7

 さて率直な印象は「アメリカから学ぶことは無い」である。しかしこのことは現地に行かなければ実はわからないし、そもそも日本国内でもデジタルサイネージに関する理解と実効のレベルはまちまちである、という前提ではあるのだが、日本の最先端事情はすでにアメリカのそれの一歩先を行っている。

 DSEへの4年間の連続参加の結果として、倍々ゲームのように拡大を続けてきた展示会であるが、会場面積も昨年からは若干の拡大に留まっており、その点でもこれまでとは様子が違う。これはアメリカでのこの市場がすでに「丘」にさしかかっている現れでもある。

 展示内容を見ても、ハードウエアでは目新しいものはほとんどない。いや、かなりない。これにはいろいろと認識しなければならないことがある。まずデジタルサイネージは技術的に目新しいことはそもそもない。こんなふうに断定するとメーカーの開発者さんからは叱られるのであるが、枯れた技術を使っているに過ぎない。たとえれば4Gケータイ電話ではなくてDVDプレイヤーみたいなものだろうか。DVDプレイヤーは完全にコンテンツを視聴するための道具であり、コンテンツの競争だ。デジタルサイネージも同様で、それで何をやるのか、どう使うのかということになる。
 しかしDVDはブルーレイに移行し、あるいは一気にクラウドに移行しようとしているように、デジタルサイネージもWEBアプリ化、クラウド化がもう目前なのだが、DSEではほとんどそういった提案は無かった。


岡谷エレクトロニクスのシースルーディスプレイ自販機
20120312-2


Manufacturing Resources Internationalの「TruVu」を組み込んだ冷蔵庫
20120312-3

 そんな中でも今年は透過型LCDの提案が非常に目立った。自販機やコンビニの冷蔵庫は数年以内にこれが当たり前になっていくだろう。その場所にあるリアルな商品と映像コンテンツの融合は新たな演出表現を求められるに違いない。


                    こちらはフィリップスブースに展示されていたもの。
                              STRATACACHEの「PrimaSee」
20120312-4

20120312-5

 他にはディレクTVのDirecTV Message Boardが放送系の私には極めて興味深い。これは衛星放送プラットフォームであるディレクTVが、放送チャンネルに独自のL字放送機能を追加してしまったものだ。

20120312-6

 番組部分はチャンネルオペレーターが衛星経由で提供し、L字部分はディレクTVがネット経由で提供してSTBで合成表示させている。詳しい方はお分かりのように、日本ではテレビ局側から、これは「混在表示」とみなされ、実現の可能性は現状極めて低い。混在表示とは放送とそれ以外(多くはネット)を一つのディスプレイに混在して表示させることをテレビ局が認めていないものだ。法的根拠は無い。テレビ局側の言い分は、「免許に従ってきちんと管理運用されているテレビ番組と、そうではないネットの情報を同一の画面に表示に表示すると視聴者が混乱する」というのが彼らの主張だ。

 ディレクTVに日本のテレビ局の主張をぶつけてみたところ、日本の実情とは180度違う答えが返ってきた。

「テレビ局はとにかく自分のチャンネルを見て欲しい。しかしある場所にいる人たちが一番感心のある情報を常に放送しているとは限らない。であるからその場所固有の情報がきっかけとなって番組も見てくれればそれでいい。」

 ロケーションオーナーからしても、待合室のようなところでお客様にテレビを見せるというのは昔から行われてきた話で、低コストなホスピタリティーサービスなわけだ。しかしテレビ番組にはロケーションオーナーの思いや伝えたい情報が全く出せなかった。そこに登場したのがこのDirecTV Message Boardというわけなのだ。月額89.99ドルで4台のHDレシーバーが提供され、メッセージは使い放題である。そしてさらに驚いたのは、この金額から一定の分配が各チャンネルに提供されるのは勿論なのだが、Message Boardではチャンネル側には追加分配が全くないのだそうだ。混在表示されてしまい、軒先で別の商売をされてしまうにも関わらず、である。

 以上のように直接の収穫というよりは、日本再発見が今回のDSEの印象である。なお本稿では記載していないが、実際のインストレーションにおいては重要であるHDMIやDVIの長距離伝送のための機器が進化していたり、簡単サイネージのソリューションも展示されているのだが各論と判断してここでは取り上げていない。

デジタルメディアコンサルタント
江口 靖二 

投稿者:江口at 10:43| 江口靖二の是々非々サイネージ