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2012年04月23日

NAB(全米放送機器展)とデジタルサイネージ

 NABとは毎年ラスベガスで開催される世界最大の放送機器展である。今年のNABでは4K(フルHDの4倍の解像度)のカメラ、ワークフロー、ディスプレイなどが各社から続々と発表されて、映像はいよいよ4K時代に突入していくことを誰もが実感したわけだ。

 4Kがトレンドであるのと同時に、「4S」が今年のNABのもう一つのトレンドだと言える。4SとはFour Screens、つまりテレビ、PC、タブレット、スマートフォンの4つのスクリーンを対象にしたサービスのことである。しかしNABにおいて放送業界がいう、マルチスクリーンに対してコンテンツを「出していく」という部分がどうもしっくりこないのである。

 NABにおいて放送業界側で語られている「4S」は生活者目線ではない。ソーシャルネットワークのようなインタラクションを人々が求めており、新しいコミュニケーションが必要だという点にはほとんど答えていないのである。あくまでも放送がメインスクリーンで、サブスクリーンまたはサブスクリーンの集合体としてのマルチスクリーンという考え方が根強い。

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          米放送システム最大手のハリス


 これまでのようにテレビ局だけに主導権があった状況から、視聴者の方は様々なスクリーンを組み合わせて使い、ソーシャルネットワークを通じてコミュニケーションしたり、情報がじわじわ広がっていくようになっていくのであって、主導権は視聴者側に移行しようとしているのだ。すなわち、4つのスクリーンに番組や広告を「出して行く」ではなく、4つのスクリーンで「参加してもらう」という変化というか意識改革がテレビ業界全般に必要になのではないだろうか。

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        OMNEONを買収した米ハーモニック

 NABではデジタルサイネージを含めた提案は見られなかった。また3月のDSEにも放送まで含めたマルチスクリーンの提案はなかった。ということは、グローバルなビジネスチャンスである。まずはこのあたりからビジネスチャンスを見極められてはいかがだろうか。

 最後にNABでのデジタルサイネージ関連の展示を2つほど紹介しておこう。一つ目はTVOne 社の CORIOmasterである。これはマルチディスプレイ用の装置で、ディスプレイのレイアウトに応じて映像を出力することができる。プロジェクターなどで曲面に映像投射した場合のための局面補正機能も搭載されている。この会社はDSEには出展していないと思うが日本の代理店もあるようだ。

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 もう一つはChristieがブース演出として利用していたプロジェクションマッピングを動画でご覧に入れよう。

 デジタルサイネージに関連した展示は10社くらいあったと思うが、特に注目するようなものはなかった。本来は「4S」ではなくデジタルサイネージを含めた「5S」でなければならないのだが、このあたりにおけるデジタルサイネージの位置づけや業界当事者の意識の低さは、アメリカでも日本と同様にまだまだようだ。


デジタルメディアコンサルタント
江口 靖二

投稿者:江口at 09:32| 江口靖二の是々非々サイネージ