<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2012年07月23日

お手軽系サイネージがブレイク出来ないわけ

 このところデジタルサイネージを利用または導入する層は、サミットユーザーとコモディティーユーザに二極分化していると思われる。その中間にはオフィス利用などがあるのだが、これはオフィス内、事業所内、工場内などの人目に触れない場所にあるので、普及度合いが可視化されないのでわかりにくい。

 サミットユーザーとは鉄道を中心とした交通機関である。電車車両やエキナカなどは拡大を続ける一方である。またエアラインや空港、最近では高速道路にも続々と利用が広がりつつある。こうした交通機関系のユーザーは、多くの人が利用するという点で圧倒的に媒体影響力が大きく、投資資金力の点から見てもまさにサミットユーザーである。この層に求められる技術的、ネットワーク的な要求は非常に高く、この市場に参入できるのは大手にほぼ限定されている。

 もう一つのコモディティーユーザー層は、確実に存在しているのだが、今ひとつブレイク感がない。主なユーザーは飲食店、理美容室、マッサージ、歯科、ホテルのフロントなどである。飲食店とホテルのフロントが一番わかり易いと思うのだが、本当に多く導入されているのだけれど、たとえばデジタルサイネージコンソーシアムメンバー企業のような大手または積極的にビジネスをしている会社の顧客にはほとんどなっていないのである。
つまり何の業界でもそうであるが、コモディティーマーケットにはサミットマーケットとは似て非なる製品やサービスが必要である。メルセデスと軽自動車の例と同じである。蕎麦屋の出前にベンツは普通使わない。車である必要すらないのでバイクということになる。サイネージ業界の人々はこの「バイク」を商品化できていないのだ。

 こうした利用の多くは、単純なスタンドアロンのフォトフレームに静止画がリピートしているだけだ。そのためにユーザ自身が量販店で5000円もしないフォトフレームを購入してきて、デジカメで撮影した写真にテキストを何らかのソフトウエアで書き込んで、それをSDカードにコピーしてフォトフレームがひたすらリピートしているだけである。繰り返すが、ここにはちゃんとしたビジネスが構築できていないのである。あったとしてもごくごく小規模の、失礼ながら名もない会社が細々と関与している程度だ。しかし利用欲求の大きさは街に出れば一目瞭然である。

 こうしたコモディティー利用のためには何が必要なのか。どうすれば大規模ビジネスになるのか。まずは端末である。これはフォトフレームではサイズ的にも表現力的にも問題がある。32インチ程度の薄型軽量ディスプレイが必要だ。それに組み合わせるSTB。これもおそらく1万円以下。インターネット接続は場合によっては必要ない。更新頻度がさほど高くはないからだ。一番重要なのは、コンテンツの制作と更新の方法。こうしたユーザー層はパソコンも得意ではないケースが殆んどで、それをどうやって解決するのか。ここがいまだにクリアされないのでまともなビジネスになっていない。ここのサービス開発なくしてビジネスの拡大はこのデジタルサイネージマーケットにおいてはまずあり得ない。

デジタルメディアコンサルタント
江口 靖二

投稿者:江口at 09:45| 江口靖二の是々非々サイネージ